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クラウド電子カルテとオンプレミス型の違い|個人クリニック向け徹底比較

電子カルテを導入するとき、最初に直面する選択が「クラウド型」と「オンプレミス型」のどちらにするかという判断です。新規開業クリニックでは約7割がクラウド型を選択しているという調査結果もあり、近年はクラウド型が主流になりつつあります。本記事では、個人クリニック(スタッフ1〜5名規模)向けに、両者の違いを費用・運用・セキュリティなど多角的に比較し、自院に合った選び方を整理します。

この記事のポイント

クラウド型とオンプレミス型の最大の違いは「データの保存先」です。クラウド型は外部データセンター、オンプレミス型は院内サーバーに保存します。費用構造、運用負荷、カスタマイズ性、災害時対応のいずれにも影響する根本的な違いです。国の医療DX政策はクラウド・ネイティブ型を推進する方向で進んでいますが、自院の診療科・規模・IT体制に応じた判断が重要と考えられます。

目次

クラウド型とオンプレミス型の基本的な違い

電子カルテは、データの保存方法により主に3つのタイプに分かれます。まずは全体像を整理します。

電子カルテの3つのタイプ

タイプ データ保存先 主な特徴
クラウド型 外部データセンター インターネット経由で利用、院内サーバー不要
オンプレミス型 院内サーバー 自院設置のサーバーで運用、ネットワーク非依存
ハイブリッド型 院内+外部の両方 両方のメリットを組み合わせ、費用は高め

本記事では、個人クリニックにとって現実的な選択肢となるクラウド型とオンプレミス型の2つを中心に比較します。ハイブリッド型は高機能ですが、費用と運用負荷の観点から個人クリニックには過大となるケースが多いとされています。

クラウド型電子カルテとは

クラウド型電子カルテは、インターネット回線を通じて外部データセンターのサーバーにアクセスし、カルテデータを管理するタイプの電子カルテです。2010年の厚生労働省による医療分野でのクラウド利用解禁以降、急速に普及しています。

使用するのは、パソコンとインターネット環境、ウェブブラウザのみ。院内に専用サーバーを設置する必要がないため、導入が比較的容易とされています。近年はタブレット端末での利用にも対応する製品が増えており、診察室以外の場所(訪問診療先、院長室、自宅など)からのカルテ閲覧も可能となっています。

オンプレミス型電子カルテとは

オンプレミス型電子カルテは、院内にサーバーを設置し、自院内でデータ管理を完結させるタイプの電子カルテです。電子カルテが日本で普及し始めた初期から存在する形態で、大規模病院を中心に長年利用されてきました。

院内ネットワーク内で完結するため、インターネット環境に依存せず、既存の医療機器との連携実績も豊富です。一方、初期費用が高額で、5年程度ごとのシステムリプレースが一般的とされています。

費用面の比較(初期費用・月額・トータルコスト)

電子カルテ選びで最も重視されるのが費用面です。両者の費用構造は根本的に異なります。

初期費用の比較

項目 クラウド型 オンプレミス型
初期費用 無料〜数十万円 数百万円規模
サーバー機器 不要 必要(数十万円〜)
設置工事 基本不要 必要(ネットワーク構築等)
端末(PC等) 既存PC流用可のケース多い 推奨スペックの専用端末が多い

クラウド型の大きな魅力は、初期費用を抑えられる点です。近年は初期費用無料で始められる製品も増えており、開業時の資金負担を軽減できます。

月額(ランニング)費用の比較

項目 クラウド型 オンプレミス型
月額費用 1〜5万円程度(利用料) 数千円〜2万円程度(保守料)
システム更新 自動(無料) 個別対応(有料の場合あり)
5年ごとのリプレース 不要 必要(初期費用レベルの再投資)

月額単体ではオンプレミス型の方が安く見えますが、オンプレミス型は5年ごとのシステムリプレース時に初期費用に近い金額が再発生するのが一般的です。この点を考慮した長期的な費用比較が重要です。

10年間のトータルコスト試算(参考)

個人クリニックでの10年間のトータルコストを試算した例を提示します。実際の金額は製品・規模により異なるため、あくまで目安としてお考えください。

試算例(小規模クリニック、スタッフ3名想定)

  • クラウド型:初期費用10万円 + 月額3万円 × 120ヶ月 = 約370万円
  • オンプレミス型:初期費用300万円 + 月額1万円 × 120ヶ月 + 5年後リプレース200万円 = 約620万円

この試算では、10年間でクラウド型がオンプレミス型より約250万円安く済む計算です。ただし、オンプレミス型には長期利用に伴うカスタマイズ蓄積や既存機器連携の価値もあるため、単純な金額比較では判断できない要素もあります。

費用判断のポイント

開業資金を抑えたい、運転資金に余裕がない段階では、クラウド型が有利と考えられます。一方、すでに運営が安定しており、長期的な安定運用・カスタマイズ性を重視する場合は、オンプレミス型も選択肢となります。

機能・使い勝手の比較

費用以外の実務面での違いを整理します。

アクセスできる場所

シーン クラウド型 オンプレミス型
院内(診察室・受付)
院外(訪問診療先) ◯(インターネット接続時) ×(原則不可)
院長室・自宅 ◯(インターネット接続時) △(VPN等の構築が必要)
学会・出張先 ×

在宅医療・訪問診療を行うクリニックでは、クラウド型の利便性が特に高くなります。一方、外来のみで完結するクリニックでは、この差は実用上あまり問題にならない場合もあります。

操作性・更新頻度

操作性は製品ごとに異なりますが、以下の傾向があります。

クラウド型の操作性の特徴

  • 直感的な画面設計の製品が増えている(新規開発が多いため)
  • 機能アップデートが頻繁(自動反映)
  • 診療報酬改定への対応も自動化されるケースが多い
  • 一方で、細かいカスタマイズには制約がある

オンプレミス型の操作性の特徴

  • 自院の運用に合わせたカスタマイズが可能
  • ベテランスタッフが慣れ親しんだ画面設計
  • 機能更新は手動対応(有料の場合あり)
  • 診療報酬改定対応に時間とコストがかかる場合がある

医療機器との連携

既存医療機器(心電図、エコー、検査機器等)との連携は、オンプレミス型の強みとされてきました。しかし近年は、クラウド型も主要な医療機器との連携実績を重ね、この差は縮まりつつあります。

既存機器との連携を重視する場合は、導入前に以下を確認することが推奨されます。

  • 自院が使用する医療機器との連携対応状況
  • 連携時の追加費用の有無
  • 連携のトラブル発生時のサポート体制

セキュリティ・BCP(事業継続計画)の比較

医療情報は最重要の個人情報です。セキュリティ対策と、災害・事故発生時の業務継続性(BCP)の観点から比較します。

セキュリティの考え方の違い

項目 クラウド型 オンプレミス型
データ保管場所 データセンター(耐災害設計) 院内サーバー
セキュリティ対策 ベンダーが一元管理 医療機関側で対応必要
外部からの侵入 ベンダー側で防御 ネットワーク切断で物理的に遮断可能
アップデート 自動・最新 手動対応(遅延リスク)

セキュリティに関しては、クラウド型もオンプレミス型も、それぞれに強みと弱みがあります。

クラウド型の強みは、専門のベンダーが24時間体制で最新のセキュリティ対策を提供している点です。医療機関側でのセキュリティ人員確保が不要となり、人的リソースの限られる個人クリニックには有利です。一方、データを外部に預けることへの心理的抵抗感がある場合もあります。

オンプレミス型は、ネットワークを切断すれば物理的に外部侵入を防げる強みがあります。ただし、ランサムウェア等のサイバー攻撃は内部侵入もあり得るため、完全な防御ではありません。近年、医療機関を標的としたサイバー攻撃が増加しており、オンプレミス型でも継続的な対策が必要とされています。

BCP(災害時の業務継続性)

医療機関はBCP(事業継続計画)の策定が推奨されており、特に2026年度からは機能強化加算の要件にも含まれています。電子カルテのタイプはBCPに直接影響します。

BCP観点での比較

クラウド型は、院内が被災してもデータセンターにデータが保全されるため、復旧時にはデータ損失なく再開できる可能性が高いとされています。オンプレミス型は、院内サーバーが被災すると復旧に時間がかかり、データ消失リスクもあります。外部バックアップ体制の整備が必須です。

ネットワーク障害時の対応

クラウド型の弱点は、インターネット回線が切断されると利用できなくなる点です。近年は以下の対策が進んでいます。

  • バックアップ回線の契約(モバイル回線等)
  • オフライン時の最低限機能(過去カルテ閲覧等)を提供する製品の登場
  • クラウド型とローカルの併用設計

オンプレミス型はネットワーク障害の影響を受けませんが、院内サーバー自体の故障リスクはあります。

国の医療DX政策とクラウド型の関係

厚生労働省の医療DX政策は、クラウド・ネイティブ型(SaaS型マルチテナント)の普及を基本方針としています。この動向を理解することで、長期的な選択判断がしやすくなります。

標準型電子カルテの動向

厚生労働省が開発を進める「標準型電子カルテ」は、クラウド・ネイティブ型を基本設計としています。2026年度中の完成を目指し、段階的に全国普及させる計画が示されています。

標準型電子カルテの主な特徴は以下の通りです。

  • クラウド・ネイティブ型(SaaS型マルチテナント)
  • 全国医療情報プラットフォームへの接続機能
  • 診療情報提供書の電子的作成・共有機能
  • 無床診療所・中小規模病院向けの設計
  • コスト抑制・データ共有促進・更新性向上を重視

医療DXの全体像については、医療DXとは?個人クリニックが今知るべき基礎知識と実践ロードマップの記事で解説しています。

診療報酬改定DXの影響

2年に1度の診療報酬改定では、システム側の大規模な対応が必要です。クラウド型は自動アップデートで対応されるケースが多く、医療機関側の負担が軽減されます。オンプレミス型では、ベンダーによる現地作業や手動アップデートが必要となる場合があります。

2026年度の改定では、電子的診療情報連携体制整備加算が新設され、レセコンの設定見直しも必要となりました。この対応に関する詳細は、電子的診療情報連携体制整備加算とは?2026年6月施行の新加算を完全解説の記事をご参照ください。

医療情報連携への適性

電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への接続や、地域医療連携ネットワークへの参加は、今後の医療DX加算の最上位区分を取得する上で重要な要素です。

クラウド型は、これらの外部サービス接続において、ベンダー側が一元的に対応できる仕組みとなっているケースが多く、導入・維持が比較的容易とされています。オンプレミス型でも接続は可能ですが、個別設定や追加開発が必要になる場合があります。

個人クリニックの選び方(判断フロー)

ここまでの比較を踏まえ、個人クリニックがクラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶべきか、判断のフローを提示します。

クラウド型が向いているクリニック

クラウド型を推奨するケース

  • 新規開業で初期費用を抑えたい
  • 訪問診療・在宅医療を行っている、または予定
  • スタッフ数が少なく、IT担当者がいない
  • 院外からもカルテを確認したい
  • 最新機能・診療報酬改定対応を自動化したい
  • BCP対策を重視したい
  • 国の医療DX政策に追随したい

特に、新規開業クリニックでは7割以上がクラウド型を選択しているとされており、開業時のスタンダードな選択肢となりつつあります。

オンプレミス型が向いているクリニック

オンプレミス型を推奨するケース

  • 既にオンプレミス型を長期利用しており、カスタマイズが蓄積されている
  • 特殊な医療機器との連携が重要で、クラウド型では対応不十分
  • インターネット回線の安定性に不安がある地域
  • 外部へのデータ保管に強い抵抗感がある
  • 自院のIT体制が整っており、長期運用の自信がある
  • 特定のカスタマイズ要件があり、汎用クラウド型では対応困難

オンプレミス型は、長年の運用実績と慣れたシステムを重視する場合や、特殊要件がある場合に選ばれる傾向にあります。

ハイブリッド型という選択肢

オンプレミス型の運用実績とクラウド型のメリットの両方を求める場合、ハイブリッド型も選択肢となります。ただし、費用はいずれのタイプよりも高くなる傾向があり、個人クリニックでは過剰投資となるケースもあります。

大規模・中規模のクリニックで、複数拠点展開や特殊運用要件がある場合に検討される選択肢です。

よくある質問

Q. クラウド型はデータが外部にあるのが不安です。安全性はどうですか?

A. クラウド型電子カルテのデータセンターは、一般的に厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」および「3省2ガイドライン」に準拠した設計となっています。24時間監視体制、暗号化通信、定期的なバックアップなどが標準装備されているケースが多く、個人クリニックが自院で同等のセキュリティ体制を構築するよりも、専門ベンダーに任せる方が実質的に安全となる場合もあります。ベンダー選定時には、ガイドライン準拠の実績を確認することが推奨されます。

Q. オンプレミス型からクラウド型への乗り換えは簡単ですか?

A. データの移行作業は可能ですが、簡単とは限りません。データフォーマットの違い、過去カルテの移行範囲(全件or直近のみ)、移行期間中の並行運用など、事前検討が必要な項目が多くあります。乗り換え費用は製品・データ量により異なりますが、数十万〜数百万円規模となるケースもあります。乗り換えを検討する場合は、複数ベンダーから見積もりと移行プランを取得することが推奨されます。

Q. 標準型電子カルテが完成するまで待った方が良いですか?

A. 現在電子カルテを導入していない場合、標準型電子カルテの完成(2026年度中予定)を待つ選択肢もありますが、以下の点に注意が必要です。2026年6月施行の「電子的診療情報連携体制整備加算」の上位区分取得には、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応が必要です。現時点で電子カルテがない状態では、加算3(共通要件のみ)の取得は可能ですが、加算1・2は困難となります。診療報酬の観点からは、現行のクラウド型電子カルテを早期に導入する選択が現実的と考えられます。

Q. ネットワーク障害時にクラウド型が使えなくなるリスクが心配です。

A. 近年は、バックアップ回線契約やオフライン時の最低限機能を提供するクラウド型製品も増えています。また、長時間のインターネット障害は比較的稀な事象です。リスク対策としては、(1)主回線と異なる通信事業者のモバイル回線をバックアップ契約、(2)オフライン対応機能のある製品を選定、(3)紙の予備記録用紙を院内に準備、といった方法があります。過度に恐れる必要はありませんが、対策は講じることが推奨されます。

Q. クラウド型は月額費用が永続的にかかるため、長期的には高くなりませんか?

A. 短期的な月額比較ではオンプレミス型が安く見えますが、オンプレミス型は5年程度ごとのシステムリプレースで初期費用に近い再投資が発生します。10年スパンで比較すると、クラウド型の方が安価となるケースが多いとされています。また、クラウド型は機能アップデートやセキュリティ対応が自動で行われるため、これらに関する追加コストが不要である点も考慮が必要です。

Q. 既存のレセコンとの連携はどちらが有利ですか?

A. 製品によります。レセコン一体型の電子カルテであれば、連携の問題は発生しません。レセコン分離型の場合、クラウド型・オンプレミス型ともに、主要レセコン(ORCA等)との連携実績があります。既存レセコンを継続利用したい場合は、候補とする電子カルテが自院のレセコンに対応しているかを事前確認することが必須です。

まとめ:自院の状況に合わせた選択を

クラウド型電子カルテとオンプレミス型電子カルテは、それぞれに強みと弱みがあります。個人クリニックでの選択にあたっては、以下の観点を総合的に判断することが推奨されます。

選択判断の5つの観点

  1. 費用:初期費用・月額・10年スパンのトータルコスト
  2. 診療スタイル:外来のみ/訪問診療/在宅医療の有無
  3. スタッフ体制:IT担当者の有無、スタッフのITリテラシー
  4. 立地:インターネット回線の安定性
  5. 長期戦略:国の医療DX政策への対応姿勢

近年の傾向として、新規開業クリニックでは約7割がクラウド型を選択しており、国の医療DX政策もクラウド・ネイティブ型を推進する方向で進んでいます。ただし、長年オンプレミス型で運用してきたクリニックが無理に乗り換える必要はなく、次回のシステム更新時期などを契機に、自院の状況に合わせた判断をすることが現実的と考えられます。

実際の製品選定にあたっては、複数ベンダーのデモンストレーションや無料トライアルを活用し、操作感・機能・サポート体制を実際に確認することが推奨されます。

本記事の情報源

最終更新日:2026年4月22日

執筆時点の情報について:本記事の情報は2026年4月22日時点のものです。製品情報・料金・市場動向等は変更される可能性があります。具体的な製品導入にあたっては、各ベンダーの公式情報をご確認ください。

中立性宣言:当サイトは特定のベンダー・企業から金銭的支援を受けておりません。記事内容は公開情報に基づき独自に作成しています。本記事は比較・解説を目的としたものであり、特定製品の推奨ではありません。

免責事項:本記事は個人クリニックの電子カルテ選定に関する一般情報の提供を目的としています。実際の製品選定は各医療機関の責任において、複数ベンダーのデモや見積もりを比較の上でご判断ください。本記事の情報に基づく判断により生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。

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